条件つき──妙に引っかかる言葉だ。

でも、進藤君がずっと黙っていたってことは、それなりに苦難があった──と思う。


秘密を知られてしまったのはあたしなのに、厚かましく無理なお願いをしてしまった。

それなのに、彼は『条件つき』と付け足して承諾してくれたんだから、当然なのかもしれない。


「わかったよ」

「──そっ。じゃあ、交渉成立だね」

進藤君は子供のように、にんまりと笑った。


「じゃあ、その条件ってのはね」

あたしは謎に包まれた『条件』に恐怖を覚えて、無意識に生つばを飲み込んだ。


「俺の彼女になること」

「……え? 彼女?」

「うん」

進藤君はまた、満面な笑みで頷(うなず)いた。


条件って、進藤君の……彼女!?


「水嶋さんはさ、俺の兄さんが好きなんだろ? でも、彼女がいるから、困らせたくない。──でしょ?」

あたしは進藤君の問いに首を縦に振る。


「だからさ、それをバラされたくない代わりに、俺と付き合ってってこと」

進藤君の、彼女。


進藤君が苦手で、おまけに今まで彼氏がいたことがない経験0のあたしが彼女だなんて、現実味が全く感じられなかった。


「別に、嫌ならいいんだよ? 水嶋さんが俺を苦手としてんの、知ってるし」

「えっ!?」

そんなことまで、見抜かれてたの!?

やっぱり、進藤君にはなんでもお見通しだったみたい。