「霧島君!」

部活が終わると、倉庫で用具を片づけている最中の霧島君に話しかけた。


「ん? 何だよ?」

「なんだよ? じゃないよ。今朝、あんな言い方しなくたっていいじゃない」

「今朝? ──あー……。『ちょっと、な』ってヤツ?」

「うん」

「言ったろ? 俺は水嶋が好きだって。たとえ水嶋が進藤を好きになって、可能性がゼロに近づいたからってゼロになったんじゃねー。だから、俺は進藤との応援はしねーよ」

「でも……っ!」

霧島君の諦めの悪さだけは感心できるけども、それでも進藤君のことは諦めたくない。


あたしがなおも食い下がる。

すると、霧島君は作業を中断して立ち上がり、徐々にこちらに歩み寄ってくる。


あたしは彼が突然に動き出したので、身構える。


「つーか、判ってんの? 今、俺らは倉庫の中。暗いから、何とでも既成事実(きせいじじつ)は作れるんだぜ?」

「え? ──きゃっ!!」

霧島君はあたしをマットの上に押し倒してきて、覆い被さった。

それから、あたしを逃がさないために腕を押さえつける。


「ここで、なかなか来ない水嶋を心配して進藤がやってくる」

「やだ……お願い……っ」

「んで。俺と水嶋が何かしてたら、アイツ……、どうするだろうな?」