「朝はどーも」

「う、うん……」

「何かあったの?」

「え? えーと……」

「朝、一緒に登校したんだ」

あたしは進藤君に誤解を招かないような発言をしようと考えて口ごもっていると、霧島君が朝のことを言う。


「あとはちょっと……な」

霧島君はこちらを見ながら口の端を上げて笑って、意味ありげな表情で言う。


そんな言い方されたら、進藤君に疑われちゃうよ……!


あたしの読み通り、進藤君はこちらに顔を向けて、疑いの目であたしを見つめてくる。


「ホントなの? それ」

「え……、あ、うん。でも、たまたまだったから」

別にやましいことはしていない。

だって、霧島君が近所に住んでいたなんて知らなかったわけなんだから。


「そっか。話はそれだけ? だったら、さっさと教室行けば」

「へーい」

進藤君は迷惑そうに眉を顰めて、霧島君にしっしっと手を上下させた。


すると霧島君は、進藤君に命令されたままにあたしたちに背を向けて、手を挙げてヒラヒラさせて行った。


「俺……ああいうしつこいヤツ、苦手なんだよね……」

進藤君は眉間のしわを深く刻んで、心底苦手そうな表情をしてつぶやいた。