「──それって、進藤のことが好きなんじゃん?」

「えっ……?」

霧島君に言われて、しゃっくりだけが止まった。


あたしが、進藤君のこと……っ?


「はぁ……。何だよ、これ。俺、不利になってんじゃん」

霧島君はぼそっとつぶやいた。

でも、霧島君の発言や涙に気を取られているあたしには、聞こえていても返せる言葉はなかった。


「とにかく、泣き止めよ。な?」

霧島君はあたしをなだめようと、頭をポンポンと撫でる。


──進藤君と同じ仕草だ。

そこで浮かぶ進藤君の笑顔で、ようやく涙が止まった。


そっか……。
“やっぱり”、進藤君のことが好きなんだ。


進藤君を好きだということを認めたくなくて、自分にまだ進藤先輩が好きなんだと言い聞かせていた。

ずっと隠していた、恋心。
でもやっぱり、ホントの自分にはごまかしきれなかったんだね……。


「とりあえず、ほら。学校、行こうぜ?」

霧島君の言葉に、無言で肯く。

霧島君はあたしが意思表示をしたことを確認すると、歩き出した。


「水嶋、早く」

なかなか来る気配がないあたしに、前を向きながら言う。

霧島君に急かされるまま、彼を追って背後についた。


霧島君も、なんだかんだ優しいんだ。

とは思いつつ、進藤君の笑顔を思い浮かべながら、彼のあとを歩いた。