その瞳で見つめて~恋心~【完】

 翌日──。


今朝はめずらしく朝練があるので、早く家を出発した。


そういえば、進藤君に連絡してない。

十字路の手前で、あたしは進藤君に朝練があることを報告し忘れていたことに気づいて足を止め、携帯を開いてメールを起動した。


「あ、水嶋じゃん」

「え? あ。霧島君」

進藤君に送信するためにメールを作成している最中、霧島君があたしに気がついた。


「霧島君、この近くなの?」

「ああ。ほら、マンション見えんじゃん? そこに住んでんの」

霧島君があたしから見て右方向に指差すと、白い高層マンションが見えた。

彼はあのマンションに住んでいるとのことだ。


霧島君って、意外とリッチなんだ。


「あれ。進藤はいねーの」

「え、う、うん」

「ふーん」

霧島君は半ば興味がないと言った感じの生返事をする。

その後、あたしは何を話したらいいのかわからなければ、霧島君も黙ったきり。



そんなときに、昨日の勝負の話が気になった。


勝負と言ったけど、一体どういうことをするのか?──だいたい、あたしを賭けるとは?──など、不明瞭(ふめいりょう)な点が多い。


不意に彼を見ると、霧島君と目が合った。


「どうかした? 俺の顔に、何かついてんの?」

「えっ? あ、ううん。なんでもない」

「………………。水嶋ってさ、進藤のこと、好きなわけ?」