その瞳で見つめて~恋心~【完】

進藤君は目を細めながら、あたしを一瞥(いちべつ)して言う。

彼の目を見ると、何かを企んでいるように思えてならなかった。


「あ。でも、強制じゃないから。あったら、の話だし。もし、俺が負けて、霧島のものになってもいいし。霧島に何かされても、俺には関係ないことだしね」

進藤君は満面の笑顔で言ってのける。

けれども、その笑顔とは裏腹に脅されているような気がして、背筋にゾクッと寒気が走った。

こんなときにも、彼の意地の悪さは健在らしい。


「ごほうび、あげたら、勝ってくれるの?」

「うん、もちろん。これから水嶋さんにどんなことがあっても、ちゃんと守る」

「ホントに……?」

「うん。約束する」

進藤君は自信満々な笑顔で言った。


「物とかはやだなぁ。なるべく、水嶋さんから直接が一番、やる気が出るかも」

「え? あたしから……?」

あたしから、直接って……。


あたしがふと思いついた案は、抱きしめることぐらい。

これでも、大きく出たほうだ。


「じゃ、じゃあ……。抱きしめる、とか?」

「うん、いいね! ちゃんと守ってね?」

「進藤君じゃないもん。絶対、守るよ」

「え? それ、どういう意味?」

進藤君はあたしの言葉に、いちいち表情を変える。

あたしは彼の百面相がおかしくて、少し笑った。


進藤君だったら、大丈夫……な気がする。
だって、進藤君のことを信じてるから。