その瞳で見つめて~恋心~【完】

「水嶋さん?」

「え、進藤君……!」

最悪なタイミングで、テニスコートの出入り口から進藤君が顔を出していた。

多分、なかなか来ないあたしを心配して、様子を見に来たんだろう。


「あ。ちょうどいいトコに来たな。進藤」

「は?」

霧島君に意味のわからないことを突然に言われて、進藤君はキョトンとしてる。


「俺、水嶋が好きなんだよな。だからさ、勝負しろよ。水嶋をかけて、さ」

「えっ……」

腕を引っ張られたかと思えば、霧島君に肩を抱かれた。

進藤先輩や進藤君でもない別人に触られて、悪寒がした。


「まさか、勝負するよな?」

霧島君は自信満々に言うので、まるで挑発しているように見える。

その様子を見て、彼の自信はどこからやってくるのだろうと疑問がわいた。


「別に構わないけど? でも」

また腕を引かれて、今度は進藤君に抱きしめられた。


「俺、負けない自信あるから」

「ふーん?」

霧島君と進藤君はお互いに見合うと、霧島君は背を向けて去っていた。


すると、進藤君は盛大なため息をついた。


「面倒なことになっちゃったなあ」

「ご、ごめんなさい……」

「まあ、仕方ないよ。とりあえず、着替えてきたら? 俺、昇降口の前で待ってるから」

「うん、わかった」

ラケットのケースを肩にかけ、更衣室へ向かった。