その瞳で見つめて~恋心~【完】

確かにカップルだったら、当たり前のことだ。

でも、あたしたちは仮の恋人。

それに進藤君は優しいから、強引にキスやそれ以上のことに持っていたりしない。


「答えらんねーの?」

「……っ」

霧島君は止(とど)めを刺すように言い放った。


恋人らしいことなんてしていないのだから、答えられるはずがなかった。


「どうせさ、進藤に何か弱味でも握られて、仕方なく付き合ってるって感じなんだろ?」

何も言えない。
あたし、そんなに強くないから……。


それでも、やっぱり秘密は守らなくてはいけない。

そのために、進藤君に協力してもらっているんだ。


「で、でもっ……! 進藤君は優しいし、いつも笑顔で……っ。意地悪なとこもあるけど、進藤君のことはキライじゃないもんっ……」

付き合う前のような苦手意識なんてなくて、進藤君のことはキライじゃない。


「へえ。じゃあ、好きなんだ?」

「っ、それはわかんないけどっ」

「じゃあ、勝負していい?」

「え?」

「水嶋が先に好きになるのは、進藤か──俺か」

霧島君はあたしに顔を近寄らせて、静かに宣言した。

その彼の表情は自信に満ちあふれているように見えた。