その瞳で見つめて~恋心~【完】

 放課後──。


「水嶋。ちょっといいかな?」

「え、何? 霧島君」

ラケットを片づけたので帰ろうとすると、霧島君に呼び止められる。


霧島優真君、同じ学年でテニス部。

だけど、霧島君とは一度も話したことがなかった。


「俺、屋上で進藤と話してるの、聞いちゃったんだけどさ」

「え? じゃあ、あの靴の音、霧島君だったの?」

「ああ」

昼休みに屋上で聞いた靴音の主は霧島君だったんだ。

気のせいではなかったことはわかったのだけど、彼は一体、何を聞いたんだろう。


「水嶋って進藤先輩が好きなんだな」

「えっ? き、聞き間違いじゃないかな? だって、あたし……進藤君のこと、好きだもん……!」

ウソ……!
それを聞かれてたの!?


その話はあたしと進藤君だけの秘密だから、絶対にバレてはいけない。


あたしは一生懸命に虚勢を張って、なんとかごまかそうとする。


「じゃあさ、進藤とキスしたのかよ」

「えっ……」

「それ以上のこと、したのかよ」

霧島君はあたしのごまかしに全く動じず、核心に迫ってくる。


その質問を投げかけられてしまったら、あたしはすっかり言葉をなくした。


「カップルだったら、当然のことじゃん」