「あ。ありがとうございます。家に着いたので」

気づけば、あたしの家の前に到着していた。

残念に思いながらも、進藤先輩に報告する。


「あ、そう? じゃあ……また、明日」

先輩は笑顔を見せて、あたしの頭を撫でてくれた。


「あ。先輩」

「ん?」

この際だから、進藤先輩に進藤君がどうして私とは逆の道を選んでいたのかを訊(き)いてみることにした。


「進藤君って、いつもあたしとは逆の道を選んでたんです」

「え? だって俺の家、この近くだぜ? ──まあ、たまたま寄り道してただけじゃねぇかな」

「そ、そうですか……」

先輩は別れを告げ、来た道を引き返しながら、手を振ってくれた。


先輩が見せた背中を見つめていると、角を曲がって姿が見えなくなってしまった。

でも、自分の通学ルートを無視してまで、あたしを送ってくれたことに胸が熱くなった。


「進藤先輩。大好きです……」