その瞳で見つめて~恋心~【完】

「そっか。──ごめんな、変な言いがかりつけちまって」

「いえ、大丈夫です」

なんとかごまかせたと胸を撫で下ろすと、先輩の家が見えてきた。


「ちょっと玄関で待ってくれるか?」

「え? あ、はい」

先輩はそう言い残して、家の中にさっさと入っていってしまった。


返事したのはよかったのだけど、季節はますます秋めいていく。

そんな秋が近づくことを知らせる寒さを噛みしめ、進藤先輩の許可が降りるのを待つ。


「あれ? 由奈ちゃん?」

「え? ──あ……」

家を見つめている最中に誰かに名前を呼ばれ、振り向くと進藤君のお母さんがいた。

両手にはパンパンにつまったカバンを重そうに持っている。

多分、買い物からの帰りだ。


「どうしたの、こんなトコで。風邪、引くよ? ほら、入って」

「あ、でも……。進藤先輩に玄関で待ってるようにって言われて」

「春樹が? ──でも、風邪引くといけないから、入って。春樹や隼斗に怒られるのは平気だから。ね?」

「はい……」

「うん。素直な子は私、大好きよ」

進藤君のお母さんは、笑顔でポンポンと優しく頭を撫でてくれた。


進藤君と進藤先輩もやるけど、お母さんの影響だったりするのかな?


あたしは進藤家のクセを気にしながら、手がふさがっているお母さんに扉を開けてやり、後に続いて家へお邪魔した。