「ただいま」
かれこれ家を出発して30分はかかったと思う進藤君は、ようやく買い物から帰ってきた。
「あ。おかえりなさい」
「………………」
夢中になっていた神経衰弱の途中だったけど、進藤君の声が聞こえたので顔を上げる。
そしてあいさつをすると、進藤君は小さなレジ袋を片手に提げ、なぜか扉の前で無表情に突っ立っていた。
「進藤君?」
不思議に思って声をかけると、進藤君はレジ袋を端に置くと、突然に笑みを浮かべた。
「あっ、ごめん。待たせちゃったね。水嶋さん、帰るでしょ? 送ってくよ」
「あ、うん。あの、先輩。ごめんなさい」
あたしは右に置いていたカバンを持って、進藤先輩に一言謝って立ち上がった。
「いいよ。サンキューな。おかげで楽しかったよ」
「はい! あたしも楽しかったです」
あたしは笑顔で言ってから先輩に別れを告げると、先輩も笑顔で見送ってくれた。
「じゃあ、行こっか」
「うん」
こうして、あたしは進藤君の家を出発したのだった。

