無事に退室させることができた進藤君は、安堵なのか疲労なのかわからないため息を洩らした。


「ごめんね、騒がしい母親で」

進藤君は扉からあたしが座る方向へ体を回し、謝罪してからあたしの隣に戻って座る。


「ううん。かわいらしいお母さんだね」

「まあ、まだ35歳だしね。うちの母親」

「ええっ!? 若いね!」

「まあ、兄さんを17で、俺を18で産んだからね」

へえ、18歳で……。
すごいなぁ……。


あたしが感心する中で、進藤君はなぜか浮かばれない表情をしている。


あたしが彼を不思議そうに見ていると、進藤君は大きく深呼吸した。


「水嶋さんになら、話してもいいかな。俺と兄さん、ホントの父親を知らないんだ。母さんとは遊びだったから、兄さんを妊娠した途端に逃げたんだって」

え……?
そんな……。


進藤君や進藤先輩はいつだって明るく振る舞っていて、おまけにお母さんも明るかった。

それなのに、そんな悲しい過去があったなんて、知らなかった。


「母さんは兄さんを出産したんだけど、すぐに俺もできてたんだ。──でも、後悔とか怒りはないんだって。今の父親とは、めちゃくちゃラブラブだからね」

「へー……」

そう話す進藤君は、なんだか幸せそう。

彼のそんな表情を見て、どこかうらやましく思えてしまう。