「いらっしゃい。ゆっくりしてってね」

「あ、はい。ありがとうございます」

あたしは進藤君のお言葉に甘えて、家にお邪魔していた。


進藤君の部屋に通されて、しばらくすると進藤君のお母さんがジュースやお菓子を持って現れた。


「にしても、珍しいわね。隼斗が女の子を連れてくるなんて」

「え?」

あたしは真ん中にあるテーブルの近くに座っていて、お母さんは向かい側に腰を下ろして、うれしそうに笑顔を作っている。

ちなみに、進藤君はあたしの隣に座っている。


その笑顔は進藤君に似ていて、そこは親譲(ゆず)りみたい。

やっぱり、進藤君のお母さんなんだな、と思う。


「母さん! 余計なこと、言うなよ。ほら、もういいだろ?」

進藤君はお母さんの突然の出現にあわてて、お母さんを立ち上がらせようと脇の下に腕を通す。


「えー。いいじゃない。こんな可愛い子とお話してみたいじゃない。──うちね、男しかいないから、ガールズトークができないのよねぇ。あーあ、由奈ちゃんが娘だったら、よかったのに」

「あー、もう。うるさいから!」

進藤君はしびれを切らして、無理やりにお母さんを立たせ、ぐいぐいと背中を押して退室させた。