「あ、水嶋さん。おはよう」

教室に入ると、進藤君が真っ先にあいさつしてきた。


「お、おはよう……」

あたしは自分の視野に進藤君を入れないために、目を反らすと、進藤君は近づいてきた。


「相変わらず、暗いね? せっかく、可愛いのに」

「……っ!?」

『可愛い』。

今まで言われたことがない言葉だったので、あたしの顔が熱くなった。


すると、彼はあたしの反応を見て、笑ったんだ。


「赤くなっちゃって、もっと可愛い。──俺だったら、ほっとかねーのに」

進藤君は手を伸ばしてきて、あたしの頭を撫でた。


「……っ! も、もういいからっ」

あたしは彼からあわてて離れて、席に着いた。


進藤君は──苦手。


彼は進藤隼斗君。

明るくて、運動神経がいい話題な男の子で、人気者なんだ。


そんな彼には進藤春樹というお兄さんがいて、同じ学校で一つ上の先輩になる。


先輩は頭がよく、冷静で、とにかく完璧な人。


実はあたし、進藤君のお兄さんに恋してます。

でも、先輩には彼女がいる──。


彼女は校内一の美人だから、とてもお似合い。

だから、地味なあたしがどうこうあがいたって、先輩は振り向いてくれないに決まっている。


もし、進藤先輩を好きだっていうことが苦手な進藤君にバレたら、なんて言われるかわからない。

だから、この想いは、バレちゃダメ──。