その瞳で見つめて～恋心～【完】

「俺、女の子を苛(いじ)めたい性格なんだよね。見てると、あの子は泣いてくれるのかな？　とかね」

そう言って、あたしに向けて進藤君は手を伸ばし、触れる。

言葉とは裏腹な、優しい手つきで、なぜか切なそうな表情をして、あたしの頬を撫でる。


「──水嶋さんを泣かしたら、どんな反応してくれるかな……？」

「え……？」

「水嶋さん……」

進藤君の顔が近づいてくる。


目を閉じて長いまつげを強調したキレイな顔が距離を縮めていくと、あたしの心臓をドキドキと激しく揺さぶる。


──ダメ、なのに……。
動けないよ……っ！


進藤君の優しさを見てしまったあたしは、抵抗さえできずに彼の顔面が迫ってくるこの瞬間を見守ることしかできない。


「──なーんてねっ」

「え？」

「キスは好きな人と、だよね？　じゃあ、大切にしなきゃね」

進藤君が突然、目を開けたかと思えば、にっこりと満面な笑顔を作って離れる。


てっきり流された結果、キスされるかとばかりに思っていたあたしは、拍子抜けしてしまってただ呆然としている。