「今日はありがとう」

「ううん。俺もいいヒマつぶしはできたし、買い物もできたから気にしなくていいよ」

夜の19時過ぎになって、あたしの家の前に到着した。


「よかった」

「いつでも誘ってね。水嶋さんのためなら、スケジュールは絶対に空けるから」

「そ、そこまでしなくてもいいけど……」

「それほど、水嶋さんが大事ってことだよ」

あたしが返した言葉に軽く笑った後に、進藤君はすぐに微笑む。


「あ、ありがとう……」

心臓がドキン……ドキン……とリズムよく脈打つ。


さすがは進藤君。

たった一言で、あたしの余裕をなくしてしまう。


「じゃあ、おやすみ」

「うん。おやすみなさい」

彼は去り際にあたしの唇に、軽くそれを合わせて、手を振る。


またもやの不意打ちに驚く最中(さなか)、進藤君へ手を振り返した。


もう……。
あんなキスされたら、すぐに逢いたくなっちゃうよ……。


彼のぬくもりや感触が残る唇に指先で触れる。

その瞬間、口唇から頬へ、頬から顔全体、そして体に熱が帯びた。

そのせいで切なくなり、我が身を抱きすくめた。