とっさに声をかけられた先を見ると、紙袋を片手に提げる進藤君が、明らかに不機嫌そうに眉をしかめていた。


「ありゃ。進藤も一緒だったんか」

進藤君の不穏な様子を察して、蓮夜君は急いであたしとの距離を取った。


「さすが、学校一チャラい男・勝村蓮夜だね。こんなトコでナンパ? 俺の彼女に」

「お褒めにいただき、どうも」

進藤君の皮肉を、蓮夜君は笑みを浮かべながら皮肉で返す。


「たまたま、お目当ての水嶋さんを見つけただけだっての」

「狙ってんじゃん。それをナンパって言うんだよ」

「まあまあ。ここらで、おいとまするからさ。許してよ?」

蓮夜君は進藤君から許しを請うような目で、見つめる。

彼の図々しさに呆れている進藤君は深いため息をつく。


「はいはい。今日は許してあげるから、さっさと消えてよね」

「じゃあな、水嶋さん」

進藤君はしっしっと追い出すように手を上下させる中、蓮夜君は全く気にも留めずに満面の笑みで手を振って去った。


「アイツも懲りないね」

安堵感や、やれやれ……と参った──そんな複雑な感情が胸に迫ってくる。

そして、ようやく嵐が過ぎ去ったと言いたげな複雑な面持ちで、進藤君はふう、と一息吐いた。


「水嶋さん、マジに気をつけてよね。何か、よからぬ予感がする……」

「え……?」

「俺の予感って、当たるんだよね」

と、不吉な言い方をする進藤君。

冗談ぽく聞こえたその言葉だが、言った彼自身は笑っていなかった。