「あっ、水嶋さん」

あたしが駅に到着したと同時に、進藤君も手を振りながら駆け寄ってくる。


「ごめんね。急に呼び出しちゃって……」

「ううん。いいよ。──実を言うと、俺も水嶋さんに逢いたくて、メールしようとしたらタイミング良く来たから、びっくりしちゃったよ」

「そ、そうなの?」

「うん。俺らって、気が合うのかもね」

「そうかもね」

お互いおかしくて、見つめ合って笑った。


「じゃあ、行こっか」

「うん」

進藤君から差し出された手を握り、ホームへと向かう。


「何、買いに行くの?」

「新しい服を買おうと思って」

「そっか。じゃあ、俺も何か買おっかな」

店に行く経緯(いきさつ)を話していると、電車が入ってきたので、乗り込んだ。


「進藤君は何か、買う物あるの?」

「今のトコ、ないかな。最近、ほしいものってないし」

「そうなんだ」

「ほしいのは、水嶋さんぐらい」

「えっ」

進藤君は冗談を言うように目を細め、そして体を密着させるように席を詰めてくる。


「し、進藤君。電車の中ぐらい、からかうのやめて」

「えー? おもしろいのに」

「おもしろくない」

と、平静を装って反論するが、胸の高鳴りを抑えることはできずに内心は満更でもなかった。