その瞳で見つめて~恋心~【完】

「あの!」

あたしは思いっきり、個室から飛び出した。


突然のことに、女子2人が目を丸くしてあたしを見つめる。


「は? 何?」

「進藤君に謝ってください!」

「はあ? 何の話よ」

「全部、聞いてました! 進藤君の悪口、言わないでください!」

あたしの必死な形相に、顔をひきつらせて聞いている人が多分、進藤君と付き合っていた人なんだろう。

何も言い返さずに、あたしを見つめるだけ。


「はぁ!? 悪いのは、進藤のほうでしょ!? 生意気、言ってんじゃねーよ!」

友達の悪口を言われて、落ち着いていられなかったんだろう。

進藤君の元カノの友人があたしに手を振りかざす。


どうしよう。
──叩かれる……!


頭でわかっていても、突然のことになんの反応もできずに、今の自分ができることは目をつむることしか考えられなかった。


もうすぐ叩かれる!──と思っていたのに、いくら待っても叩かれる様子がない。


「──痛っ、ちょっ……! なんで、いんのよ!?」

不審に思ったそのとき、女子の痛がるその声を聞いて、目を開けた。


「うるさい。黙ってよ」

すると目の前には、叩こうとした彼女の手を進藤君が掴んでいるシーンだった。