──テーマパークからの帰り、進藤君に手をつながれて歩く。


「水嶋さんのおかげで楽しかったよ」

「ううん。こっちこそ、ありがとう」

あたしたちは十分に気分が満たされ、足取り軽く歩み続ける。


そんな満足しているときに、ふと思いつく。

彼はなぜ、進藤先輩に言われて来たのだろう、と。


「進藤君、どうして来たの?」

「ん? 兄貴がどうしてもって今までにないくらいにしつこく言ってきたから、仕方なく来たってわけ」

「そうなんだ……」

「兄貴も判ってくれてるから。俺が兄貴のことを嫌いだってことを。だから、しつこくされたことなんてなかったから、逆に興味がわいたのかもね」

進藤君は笑顔でトゲのある言い方をしているのに、あたしにはなぜか淋しげに見えてしまう。

どう表現していいかわからないけど、そんな気がした。


「あっ。進藤先輩にお礼言わないとね。せっかく、進藤君と付き合えることになったんだし」

またよろしくない空気が流れてきたので、換気をするように話を引き出す。


「もー。また、兄貴の話?」

「え?」

進藤君はあたしを見ながら頬を膨らませている。


「今、水嶋さんは俺といるんでしょ? 他のヤツの話、しないでよね」

「そ、そう言われても……」

「何? 俺に逆らうの?」

「わ、わかった! わかったから、離れて!」

彼はずいずいと顔を段々と迫って問いつめてくるので、徐々に緊張感が高まる。