『お互いに好き』か……。


さっぱりとした答えは進藤君らしくて、意外と腑に落ちた。


「だからさ、気にしないでよ。俺は少なくとも、気にしてないよ?」

進藤君……。


彼を苦手としていたあたしは、進藤君のことをあまり知らないでいた。

だから、進藤君の優しさを知って、胸が暖かくなる。


「──でねー」

「誰か来る。隠れよう」

「マジ、最悪じゃーん」

口をふさいだまま、進藤君はあたしを後ろに引っ張って、個室に隠れた。


「──あれ、この声……」

「え?」

あたしたちが個室に入ったと同時に女子が入ってくると、進藤君はまるで聞き慣れているかのような反応をする。


「隼斗がヤり捨てるなんて、思ってなかったよー。まあ、別にいいんだけどね。だってさアイツ、兄貴と全然違うんだもん。テクだけだよ、上手いの」

隼斗ってことは、進藤君のこと……?


それで、確信したんだ。

彼女は、進藤君が別れた一人だということを。


「やっぱ、本カレだよねー。しかも、3股とか。冗談やめてよねーって話よ」

彼女の小さな笑い声が、トイレにこだまする。


そんな……。
進藤君も悪いけど、この人も許せない……。

まさか、彼女も二股かけていたなんて。


「え……っ、水嶋さっ……」

進藤君の驚く声が聞こえたけど、あたしはなりふり構わずに、口をふさいでいた彼の手を振り払う。