「隼斗とケンカしたんだ?」

「はい……」

というか、あたしが一方的に言っただけなんだけど……。


──進藤君から逃れるために逃走したはずなのに、結局、進藤先輩の家に来てしまった。


「つーか、俺はその時点でフラれてんの、決定してんだけど」

「ごめんなさい……」

彼は大きなため息をついて、肩を落とす。


あたしだって、進藤君から逃げてきたはずだ。

けれども、真っ先に浮かんだのは自宅ではなくて、進藤先輩だったから。


「とりあえず、謝れば?」

「そんな、無理です……。だって、進藤君に大キライって言っちゃったし……」

そう言うと、進藤先輩は面倒だな……と言いたげに頭をかいて、再びため息を洩らす。


「隼斗は言ったんだろ? 由奈が好きだって。──この際言っちゃうけど、隼斗はずっと由奈のことを心配してたんだぞ?」

「え……?」

「アイツ、心配性なんだよ。由奈にだけは……な」

進藤先輩は悲しそうな表情で言う。


なぜ、そのような顔をしたのかはわからないから、憶測でしか言えない。

しかし、先輩は彼氏である自分より、進藤君はあたしのことを深刻に考えているんだ──それほど、好きな相手なんだ──との気持ちを込めているのではないだろうか。


「とりあえず、隼斗と話せよ。な?」