「進藤はまたサボリかぁ。最近、多いよな」

昼休みに入った瞬間、クラスの男の子は進藤君の話をしていた。


そういえば、授業のときは全く姿を見せていなかった。

何かあったんだろうか。


「水嶋さんと別れてからだよな?」

男の子たちの言葉に反応したあたしは彼らを見ると、彼らもあたしを見ながら話し出す。


「水嶋さんって、隼斗に捨てられただけなんじゃねーの?」

「だよなぁ。アイツ、女遊びが激しいし」

──やだ。
それ以上、聞きたくない。
もう、言わないで!


目をつむってうつむき、両耳をふさいだ。

耳を手で覆って聞こえなくしたはずなのに、彼らの笑い声が頭の中に入ってきて頭痛を引き起こすようにガンガンと響いてくる。


「ちょっと!!」

耳に届いた大きな声は、聞き覚えのあるものだった。


「由奈のこと、言わないでよ。傷ついてるんだから」

目を開けて顔を上げると、奈月ちゃんがあたしの前に立って彼らを叱咤(しった)した。


男の子たちは奈月ちゃんの強い姿勢に怖じ気づいたのか、何も言い返さなかった。


「な、奈月ちゃんっ」

彼女を呼ぶと、奈月ちゃんは鬼の形相で振り返った。


その表情に思わず凍り付いたあたしを見て、奈月ちゃんは盛大なため息を吐き出して普段の冷静さを取り戻した。