そう言った荒城は立ち上がり、あたしと一緒に台所へ向かった。



「あら・・・ちがっ・・・た、健って料理できるの?」



「ま―、そこそこ?あ、椎那は座っときな。

無理したらまた熱出るぞ?」



「うん、ありがとう」



・・・健のこういうところ、大好き。



優しくて、頼りになって、たまにSっ気あって、小悪魔だけど・・・



なんだろう、根拠はないけど・・・全部好き。





つないだ、温かい手


子犬みたいな寝顔


あたしの名前を呼ぶ声


照れてる顔に、心配そうな顔


そして、無邪気な笑顔・・・




見ていると、こっちも笑顔になる。



恋って・・・こんなに幸せなんだ。



気づけば、あたしは健の後ろから腕をまわしていた。



「え、椎那・・・?」



「健・・・あたし、健と会うまで恋なんかしたことなかった。

恋する気持ちさえも知らなかった。

・・・でもね、健と会って・・・毎日がすっごく楽しくて、幸せなの」



「椎那・・・」



「ミカさんのこと知った時・・・最初、諦めようと思った」



手の力が、つい強くなる・・・でも、伝えなきゃ。



「でも、あたしはあたしだもん、叶わなくても想い続けようと思ったの。

今も、これからも。

あたしが想うのは健だけだよ。

健・・・恋する気持ちを教えてくれて・・・

あたしと出会ってくれて、ありがとう」



ずっと言いたかった気持ち、言えた。



付き合って、好きっていう言葉は伝えた。



でも、『ありがとう』は伝えていなかった。



だから・・・ずっと伝えたかったんだ。



すると、健はあたしと向かい合った。



「俺も・・・椎那と会って、幸せすぎて、楽しすぎて。

ミカのときは・・・本当にごめん。

でも・・・それを忘れさせてやるぐらい、幸せにしてやる。

百年先も、その先もずっと・・・」








山内 椎那、16歳。


荒城 健、16歳。







あたしたちは、少し早い、誓いのキスを交わした。






〝愛してる〟




そう、想いを馳せて。












【End】