妄想店長~大人と子供~

 えぇっと、元の私はどんなでしたっけ?

 いつも笑顔で、常識的で、自分の立場を弁えていて、誰にも振り回されない。汚い本心なんか笑顔で上手に隠していましたっけね?

 感情なんか糞喰らえです。

 そんなもの大人の私には必要ない。

 何かに執着して感情を持ってしまった結果がこの始末。

 良い勉強になりました。

 氷を手に取りアイスピックで砕く。

 日頃やっていない行いは酷く難しい。

 アイスピックを握る私の手の甲に見つけた、あの子の爪痕。

 滲んだ赤はすっかり乾いて大した傷ではないけれど、まるで馬鹿な私に付けられた戒めの様でした。

 いっそ、消えずに残ってくれて構わない。

 そうすれば私は、もうあんな馬鹿な事しなくて済む気がしますから。