「ひなた・・・」
徹はポツリと呟いた。

『徹、私はここに居るよ!気づいてよっ』

「徹さん・・・」
「こんにちは、ひなたまだ起きてませんか?」
お母さんは首を縦に振った。

ーガラガラ

知らない女の人が入ってきた。

「徹ぅ、待ちくたびれたぁ。早く行こー?」
女の人は馴れ馴れしく徹に話しかけた。

「その人誰?」
美穂が女の人を睨みながら言った。

『そうだよ!誰なの?!』

「この子は親戚なんだ」
「そうなんだ」

・・・嘘つき
徹、親戚居ないって言ったくせに。

徹は、
「では、失礼しました。」
そう言って女の人とどこかに行ってしまった。

ーコンコンッ ガラガラ

「面会終了の時間です」
清潔感の溢れるナースさんが入ってきた。

「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」
「そうですね、またお見舞いに来ます。」

お母さんと美穂も帰っていった。

「では私は用があるので失礼します。
何かあったら呼んでください。」

そう言って谷山さんはパチンッと指を鳴らしてどこかへ消えていった。

幽体の私と、本体の私だけ残された病室は、どこか寂しげだった。