「お互いため口で話しませんか?」 杉山さんはそう笑った。 『そうですね』 私も笑い返した。 それから少し話をした。 杉山さんは、22歳で雑貨屋のショップ店員らしい。 杉山さんの印象は、落ち着いた雰囲気でどこか寂しげな笑顔を見せる、そんな人って感じだ。 少しの沈黙の後、そんな沈黙を破ったのは杉山さんだった。 「実は俺、記憶喪失らしいんです。」 また寂しげに笑った。 私は無言で話を聞く。