そんな日々がある日突然に変わったのは、

ほんのちょっとした運命のイタズラだったんじゃないかと思う。


無事に就職が決まり、大学を卒業した瞬間に追い出された実家。


やっと一人暮らしには慣れたけど、相変わらずのコンビニ弁当な毎日。



「…今日はシャケ弁当だな。」


そう呟きながら俺は、慣れ親しんだコンビニの、慣れ親しんだ弁当を持ち上げる。



「いらっしゃいませー。」


店員の声と同時に無意識に振り返った。



「―――ッ!」


瞬間、目の前に居る人物に俺は、目を見開いたまま戸惑って。


こちらに気付いていないのだろう相手は、

やる気なくポケットに手を突っ込んでキョロキョロと品定め。



「…清水…?」


紛れもなく、彼女はうちのクラスの清水セナだった。


私服だが、噂されてるヒールではなくスニーカー。


カーディガンを羽織っただけのラフな格好だ。



「…あぁ、大先生様じゃん。
何やってんの?」


こちらに気付いた清水は、だけど顔色ひとつも変えることはない。


“大先生様”って辺りが、嫌味でしかないけど。



「…お前こそ、こんな夜遅くに何やってんだ?」


「…プライベートまで答える必要なくない?
心配しなくても、コンビニでエンコーなんか出来ないって。」


相変わらず他人事のように言いながら、清水は俺の後ろにある弁当を選ぶ。


噂のことを本人が知っているのは意外だったけど、

それを何とも思っていないようなこの口調。



「てか、ついでだしあたしのも買ってよ。」


そして、副担任にカツアゲとは。


差し出されたから揚げ弁当を見つめながら俺は、呆れ半分で口元を引き攣らせた。