「…あたしエンコーなんてしてないし、何もかも自由な女王様でもない。」


「…うん。」


俺の胸に顔をうずめながら、清水はポツリポツリと言葉を紡ぐ。


何だかよくわかんないんだけど、とりあえずその頭を優しく撫でた。



「…アンタだって本当は、信じてないんでしょー…?」


語尾を伸ばして話す時の清水はいつも、疲れた顔してるの知ってるから。


見えないその顔を想像し、やっぱり可哀想になって。



「…信じてなかったら庇ったりしねぇだろ?
つーか、お前こそちょっとは俺のこと信用しろよ。」


「…ちょっと信用したけど、やっぱり魚嫌いな人は好きじゃない…」



またそれですか。


深いため息をつき俺は、ちょっと寂しいけどその体を離し、

ベッドまで連れて行った清水をそこに座らせる。


なのに清水は、倒れ込むように俺のベッドに寝転がってしまって。


仕方なく、その脇に腰を降ろした。



「…じゃあお前といつも一緒に居る白石は、“魚が好き”なのか?」


手持ち無沙汰になってしまい、仕方なく机の上に投げていた煙草の一本を抜き取った。


そして火をつけながらその煙を吸い込み、ため息と共に吐き出して。



「…誠は、魚嫌いだから良いヤツなの。」


「全然意味わかんねぇし。」


かなりわかるようになったとは思う清水の思考回路だけど、

やっぱりまだ、よくわかんないところばかりだ。



「つーかぶっちゃけ聞くけど、お前と白石って何?
エンコーとかより、そっちのが気になるんだけど。」


「…何怒ってんの?」


口を尖らせて言う俺に、清水は不思議そうな顔をこちらに向けてきた。


座る俺と寝転がる清水の視線が、同じ高さでぶつかって。