「約束が違うんだけどー。
やっぱ、教師って適当なことしか言わないよね。」


口を尖らせるあたし。


進路希望の紙を出せばどこかに連れてってくれると言うので出したのに、

いざこの男の家に来たら、“忙しい”と言いやがる。



「…いや、俺もどっか連れてってやりてぇけど、テスト問題の作成とか、地味に休みの日も大変なんだって!」


「…てゆーか、何で最近小テストが多いわけ?
アンタ、あたしを殺す気?」


「それは、ホラ!
そうでもしないとセナちゃんが俺んち来ないだろ?」


この男は、本当に悪気もないような顔であたしをイラつかせる。


おまけに、“セナちゃん”ってのが、癇に障るし。



「マジムカつく!
あたし忙しいし、帰るから!」


言い捨て、背中を向けた。


瞬間、全身に重みを感じて口元を引き攣らせると、

背後からあたしを抱きしめた岡部が口を開いた。



「…帰ることねぇだろ?
もしかして、男のとこでも行くつもり?」


「関係ないし。」


自由を奪われながらもあたしは、一生懸命に荷物を持ち上げた。


とりあえず、毎度のことながらウザくて仕方がない。



「…帰ったら、テストの答えとか教えてやらねぇぞ?」


「良いよ、授業出ないだけだから。」


それだけ言い、背中の男を振り払って部屋から出た。


とにかくあの男は、疲れて仕方がない。


これなら留年する方がマシだけど、いざ留年したら、またあの男が一年付き纏うだろう。


どっちにしろ、面倒極まりないのだ。


岡部の家からの帰り道は、いつも決まって怒ってる気がする。


今度の期末が終われば、テスト休みのまま夏休みに突入。


そしたら少しだけ、こんな日々から解放されるのだろか?