「セナ!
お前、メールしたんだから返せよ!
ったく、来てるのか来てないのかくらい教えてくれなきゃ、こっちも困るだろ!」


少し不貞腐れたようにあたしを見つけてこちらに寄ってくるのは、

どこからどう見てもパンクに制服を着崩した“誠”。


実に正義感溢れる名前だが、不似合いすぎて最初はギャグなのかと思った。


ちなみに、付き合ってるわけではない。



「…困られる方が困るよ。
それに、急ぎの用なら電話して、って言ったじゃん。」


“メールは指が疲れる”と言うあたしに、誠はあからさまに口元を引き攣らせた。


ついでに、あたしと誠が一緒に居れば、

悪目立ちするのか生徒たちが、ヒソヒソと話し出す。


この見た目にプラスして、誠は留年してるから年上。


それだけでも十分敬遠される要素タップリなんだけど、

あまり良くない噂を流されているあたしと一緒に居れば、それも尚のことだろう。



「…そんなことよりさ。
今度のライブ、この前作った新曲の初お披露目しようと思うんだよ!」


“どう思う?”なんて聞かれても、困ってしまう。



「…あたし、あの曲あんまり好きじゃない。」


「うわっ、辛口!」



見た目通り誠は、バンドマンでギターをやっている。


だからって別に、ただ叫んでるだけのパンクじゃないから、

誠のバンドの曲は、結構好きなものが多い。


ただ、あの叫んでる風にしか聴こえない新曲は、ちょっと頂けない、ってだけ。



「…わかったよ。
貴重な意見として、参考にするわ。」


そう言って誠は、腕を組んで考えながらどこかに行ってしまった。



高校に入ってすぐに友達に連れて行かれた小さなライブハウスのうるささに、

あたしは思いっきり虜になってしまった。


気付いたら毎日のように通っていて、気付いたら店長に手伝いさせられて。


そして気付いたら、そこでバイトするようになっていたのだ。


ライブに出ていた誠とは、学校が一緒だと知ってからは意気投合して、

それから仲良くなっただけのこと。


あたしも誠も、あの異世界みたいな空間が大好きなんだ。