俺は昔から和食党だから、週に何度かは魚料理を食べる。


DHAだかGHQだかだって、多分人より多く摂取しているだろう。


そんな俺が魚嫌いなわけがない。



「…だったら、進路表出してくれたら、どっか連れてってやるよ。」


「マジ?!」


瞬間、清水の顔が明るくなる。


余程毎日を退屈に感じていたのだろうな。



「どこ?!
ひょっこりひょうたん島?!」



良いけど、それって実在すんの?


だけど今までで一番嬉しそうな清水の顔に、俺は笑ったまま言葉を飲み込んだ。


やっぱりコイツの言葉は意味不明だけど、かなり面白い。



「セナぁ。
俺、マジでそーゆーとこ好きかも。」


抱きしめる俺に、清水は“煙草吸うんだけど”と一刀両断。


ついでに耳まで引っ張られ、俺はイーッと涙目になる。



「馴れ馴れしい。」


「…つまんねぇー…」


渋々体を離す俺をスカした顔で見た清水は、咥えた煙草に火をつけた。



「…俺のことも、名前で呼んでも良いんだぞ?」


「名前、知らないし。」



ははっ、そんなことだと思ったよ。


どーせお前、クラスメイトですら覚えてねぇだろ?



「…すげぇムカつくー…」


「あっそ。」



終わりかよ。


ちなみに、次の日清水が意気揚々と提出した進路希望の紙に書かれていたのは、

“宇宙飛行士”とかって壮大な夢だった。


それを見て俺は、“NASAって遠恋?”なんて他人事のように思ってしまって。


ついに俺の脳みそも、コイツに浸食され始めたのだと思った。