トマトときゅうり



「・・・・いえ、あのですね」

「早く乗れよ。返事はハイ、だろ」

 かっちーん。何なのよ、この俺様。流石に私でもムッとくるがな!

「・・・・・・・・嫌です」

「ん?」

 くるりと振り返ったきゅうりの前で、震えそうになる足で何とかたっていた。

「説明するって言ったじゃないですか。それまで乗りません」

「あー・・・」

 艶のある黒髪をかきあげて、きゅうりは少し眉間にしわを寄せた。

「・・・判った。でも今から帰るやつらで駐車場は混むし、取り敢えず乗ってくれないか?中で話すから」

 確かに、大会が終わってぞろぞろと出てくる営業や役員達で、駐車場は混雑し始めていた。

 私が今突っ立ってる場所では確実に轢かれる、と判ったので、しぶしぶ言うとおりにする。

 内装にベージュと黒を使ったスタイリッシュな車内におずおずと収まった。

 きゅうりが運転席に収まり、深くため息をついた。

「説明して下さい」

 ちらりと横目でこちらをみて、嫌そうな顔で話しだした。

「・・・あの子から逃げてた」