トマトときゅうり



 いきなり機嫌の悪くなったお嬢さんと、いきいきと嬉しそうな青山さんに別れを告げて、私は仕方なくきゅうりの後を追う。

「えーっと・・・何で、私はきゅうりを追う羽目に・・?」

 ここ最近マトモに喋ってない相手の背中を追うこの不思議は、本人に説明して貰うしかない。

 私に判ったことは、きゅうりが長谷寺様のおじょうさんに冷たかった、ということだけ。

 口調は丁寧、顔には笑みを浮かべていたけど、慇懃無礼というか、とても冷たく高い壁を感じさせる言い方だった。

 あれが・・・拒絶というやつか・・・。

 私は勿論、誰かにあんな風に接せられたことはない。だけどあれが好意をもっている相手からだったら、相当傷つくだろうなあ・・・とぼんやり彼女に同情までしてしまった。

 駐車場まで誘導されて、やっときゅうりに追いついた。

「楠本さん!どこ行くんですか?!」

 まったく、足が長いってのは・・・とやっかみ半分で恨めしげにきゅうりの足を睨む。ちょっとはペース落として歩いてよ・・・追いつくだけで、息が上がるったら!

「お前、ご飯食べた?」

「・・・はい?」

「まだだったら付き合えよ。とりあえず、乗って」

 何というタイプかすらも判らない、車体の低い、やたらとスピードの出そうな車のドアを開けて、きゅうりが言う。