いきなりの事に驚いて、噛みまくってしまった。私の腕を掴むきゅうりがそれを見てニヤニヤ笑っていた。
「悪い、稲葉。今急ぐからまたな」
「あ、また連絡します。平林が飲みに行こうって言ってましたよ」
「おう、体あけるから誘ってくれ」
言いながらまた歩き出すきゅうりに引きずられて私も歩く。振り返って会釈をしたら、中央の稲葉は何やら面白そうな顔をして手を振っていた。
・・・な、何だろ・・・あの笑顔。うん?ま、まあ。それよりはちょっと、先にこっち――――――
「いった・・・痛いです、楠本さん!ちょっと、聞いてますか?!」
「悪い、トマト。後で説明する」
「はい?今・・・今お願いします!私もう帰るところですから!」
「あ、いたいた」
へ??と思って、書き分けていく人ごみの前方に目を凝らすと、二つの人影を発見した。
何と、いつかの長谷寺様のお嬢さんと、青山さんだった。
「必ず後で説明するから、お前、黙っといて。頼む」
珍しく真剣な顔できゅうりが呟く。深く考えもせず、つい「はい」と答えてしまった。
「お待たせしました」
「あ、楠本さーん!もう、待ったよ~本当に・・・」
パッとこちらを振り向いて笑顔になった彼女は、きゅうりと一緒にくる私の姿をみて目を丸くした。
「あら、この間の事務員さん?」
「あ、はい。こんにちは、長谷寺様」



