トマトときゅうり



 きゅうりも戻ったばかりで喉が渇いているだろうから、お茶を用意しようと思ったのだ。

 給湯室の窓から見える公園に視線を走らせる。

 ここから、あの公園・・・見えるんだ。

 きゅうりとアイス、アイスで指、私の指、そしてそれは・・・。

 蒸気が噴出して、やかんがカタカタ鳴った。ハッとして、火を止める。

「・・・もう、考えないって、決めたんじゃなかったっけ」

 自分に呟く。

 ダメダメ、はい、深呼吸~。

 今は恋愛ところじゃないでしょう、私!!それよりも生活を安定させるのが先だっつーの。事務の仕事だって、アルバイトといえどなおざりには出来ない。非常にやりがいもあるし、責任感もある仕事なのだ。

 頭をふって煩悩を追い出す。

 身の丈の幸せを知ること、は我が家の家訓。

 届かない花に手を伸ばして崖から落ちてどうする。今のアルバイト先まで失ったら、それこそマジで、実家帰り決定だ。

 それだけは回避したい。自分が情けなくて一生立ち直れなさそうだから。

「さ、お茶お茶」

 号令をかけて、お盆を手に来客ブースへ向かう。

 コンコンとノックする。

「失礼します」