トマトときゅうり



 からかってる感じではなかった。真剣な黒目が、真っ直ぐ私をみていた。

「・・・長谷寺さんと、青山に宣言をして、それからちゃんと言うつもりだったんだ」

 きゅうりの口元が少し微笑んだ。

「お前が好きだと」

 カーンと、言葉が頭に突き刺さる。私はちょっとばかりパニックをおこしてしまって、そしてつい、言葉をこぼす。

「・・・でも?」

 きゅうりがため息をついた。

「青山がお前を抱きしめて、キスをしたって聞いて、カッときた。・・・お前から告白が嬉しかったと聞いて、嫉妬した。俺は・・・遅かったのかと」

「――――――――――」

「それで、車に戻った時、凍えて顔色もなくした瀬川をみて――――――我慢できなかったんだ。すぐにでも、温めないとと思って」

 意識の全てが、きゅうりに集中する。この世の中に、ふたりしか居ないような感覚だった。

 さっきの言葉はちゃんと聞こえていた。

 だけど、まだ実感がなく私は目を見開いているだけだった。

 だってだって、まさか、そんな。


 きゅうりが・・・・・私を―――――――――――――