その点、仲間さんはキッチリと線を引いている。営業への同情は仕事の邪魔になるのよ、と最初の頃に言われている。営業は営業、事務は事務。私達は私達の仕事をちゃんとやることで、営業達の後方支援をするのよ、って。

 だけど今は、私に優しく接してくれているんだな、と判った。

 困った微笑を見せてから引き出しを開けて仲間さんが言った。

「ほら、しけた顔しないの!青山君が怒られるの見るのが嫌ならおつかい行ってきてくれない?メール便、溜まってるから」

 仲間さんの気遣いに、ちょっとほっとして笑顔で返す。

「はい、行ってきます。半年いても、やっぱり人が怒られてるのには慣れませんね」

 これから帰社した営業は、順々に霧島部長の面談が待っている。私はそれを聞きたくないのだ。他人事とは思えなくて。

「慣れるっていうのが、本当は危ないんだろうけどね。じゃあお願いね」

「はい、行ってきます」

 見送られて、荷物を手にエレベーターに乗った。

 ああ・・・悲しいな。力にはなれなかったか。

 降りていくエレベーターの壁に背中を預けてぼーっと思い返していた。仲間さんの美しい微笑みを。

 ・・・うん?

 あの笑顔・・・・何か、含んでた?