トマトときゅうり



 夜は段々深くなっていくのに、まだまだ明るいクリスマスイブの街を車は静かに走っていく。

 また雪が降り出しそうな雲が空には広がっていた。


 私のアパート前に到着した。

 ほんの、2時間前の私はのんきな顔でここに帰ってきたんだった。まさか、こんなことが起こるとは思わずに。

 きゅうりの方を見ることが出来なくて、それでも長い間の沈黙に耐えかねて、送ってくれたお礼を小さく呟く。

「・・・ありがとう、ございました」

「うん」

 きゅうりの声は掠れている。私の耳はその声を絡めとリ、心の真ん中へと注ぎ込む。

 本当は、理由を聞きたい。今日の事とか、さっきのキスとか―――――。

 でもその勇気もなく、ため息を押し殺してシートベルトを外した。

「おやすみなさい、楠本さん。・・・また、明日、ですね」

 ドアを開けようとしたら、左手をきゅうりに掴まれた。

 運転席から手を伸ばして、きゅうりが私をじっと見ている。

「―――――――帰るのか」

「・・・それで送ってくれたんじゃないんですか?」

「―――――」