やはりその気になっていた契約者は断られたことに呆然とし、大体は怒る。
自分の身体では保険に入れないという現実は、なってみれば結構ショックなことなのだ。ところが、そのお客様は色々頑張った青山さんが気に入ったようで、今回は残念だけど、2年後にもう一度試す、と言ってくださったのだとか。
保険会社の営業にとって、それは奇跡に近い一言だ。
やるだけのことはやって、お客様からの信頼もいただけたと、契約にはならなかったがあの時の青山さんは喜んでいたものだ。
「確かに持病で死亡保障のつく総合保険には入れませんが、今年の夏に出た中高年をターゲットにした個人年金やガンに特化した医療は入れるんじゃないですか?」
個人年金でも毎月かけるのはすでに年齢のためにアウトではあろうが、一括払いなら元本が割れずにつくることも可能なはずだ。
きゅうりは遠くをみつめて考え込んでいる。切れ長の瞳が細められ、いつもより厳しい顔をしていた。
「・・・確かに個人年金なら・・・。だが、青山がそれを見逃してるとは思えない」
「はい、そうですね。だけど、青山さんはそのお客様のことしかターゲットにしてないかもしれません」
私の言葉に、きゅうりはうん?と言って顔を向ける。瞳が合ってしまって一気に緊張した。
出来るだけ自然に視線を逸らし、私は続ける。
「私も一度お客様と電話で話しましたが、契約者様には留学中の娘さんがいらっしゃるんです。その子の保険も考えないと、と話されてたのをさっき思いだしたんです」
「娘?」



