どれだけ罵っても、叫んでも、きゅうりが黙っていることに更に傷ついたのか、唐突に話すのをやめて、くるりと踵を返して彼女は行ってしまった。

 ヒールの音を高らかに鳴らして。

 背筋を真っ直ぐに伸ばして、お嬢さんは歩いていく。

「―――――これで、良かったんですか?」

 寒さで掠れた声で聞く。

 去っていく彼女の背中ををじっと見つめたまま、静かな声できゅうりが言った。

「・・・あのまま続けるわけにはいかなかったからな」

 気になっていたことを口にしてみた。

「解約、されちゃいますかね」

 きゅうりはふう、と息を吐いた。

「そればかりは判らない。あの契約は、どちらも娘ではなくて父親が契約者だ。長谷寺様がどう判断されるか、だな」

「・・・そうですね」

 吐く息は白くなって、暗い空に舞い上がる。
 
 青山さんの為にも、クリスマスの星にお祈りしとこう。でも、あの剣幕ではねー・・・きゅうりが一体どんな悪役に仕立て上げられることやら。お嬢さんは、そんな人ではないと信じたいけれど―――――。

「―――――ところで」

「へ?」

 いきなり思考を中断させられて、間抜けな声が出た。