頭を下げると、青山さんは笑った。

「ああ、よかった。デートとか言われたら、どうしようかと思った」

 ホッとした、と言って、照れて笑っている。

 ・・・いい人だ。

 何で私、この人を好きにならなかったんだろう。きゅうりみたいに意地悪しないし、自然体で話せるのに。

「急だったし、期待してなかったから気にしないで。また今度、ご飯行こうよ」

「あの・・・」

「友達として・・・・いや、同僚として、でいいからさ」

 優しさが身に染みた。

「はい、ありがとうございます」

 せめてと思って、にっこりと笑った。青山さんはじゃあ、と手をあげてエレベーターに向かった。

「いってらっしゃい、頑張って下さい」

 頷いてエレベーターに乗り込む青山さんを見送って、自席に戻った。

 仲間さんが、あらまだ顔赤いけど、と言うから青山さんに誘われたことを言ってみた。きゅうりに更にからかわれたとは言えない・・・。

 すると、同情的な表情で、少し眉を寄せた。

「やっぱり青山君は瀬川さんのことが好きだったのね。可哀想だけど・・・でもその気がないなら、やっぱり断って正解よ。青山君てちょっと猪突猛進なところがあると思うから・・・ついていったら襲われちゃうかもよ」

 ぶっ、と思わず噴出して、咳き込む。

 何で皆そんなこと判るのよ~!??一度キスされました、なんて、仲間さんにも口がさけても言えないわ・・・。