いつだって、この人は私にこれだけのパニックをもたらすのに・・・。

 きゅうりには私なんて何の影響も与えられないんだなあ~・・・。

 あーあ。

 また凹みそうになる自分に心の中で叱咤激励を繰り返す。いいのよ!今晩は事務として役に立てたじゃないの、そう思って、何とか笑顔を取り戻そうと努力していた。

 家に帰りついたら、既に夜も11時半を過ぎていた。流石にあくびが出る。

「じゃあな、本当に今日は助かった。ありがとう」

 いつものにやり笑いじゃなかった。

 すごく、優しい笑顔だった。しばらくそれに見惚れてしまって返事が遅れる。

「・・・いえ、よかったです。お役に立てて。お休みなさい」

 こちらも笑顔で返す。

 風が垂らしている髪を撒き散らし、一瞬目をつむった。

「寒いから、早く入れ。――――そうだ、トマト」

「はい?」

 きゅうりの声に顔を上げる。

 外灯の下、その光に照らされて、きゅうりはすごく綺麗な笑顔で私を見ていた。

「その格好、似合ってる。化粧も、いつもと違って色っぽくていい」

「・・・は・・」

「おやすみ」