トマトときゅうり



 ボッと音がして、文字通り「顔から火が出た」のが自分でも判った。

「・・・いえいえいえ!見とれてたわけではっ!!お腹が空きすぎて脳が酸欠に!」

  手をぶんぶん振って、イケナイ妄想を打ち砕く。

  きゅうりはニヤニヤ笑って私の慌てぶりを見ていた。

「俺の指、味見する?」

「しません~っ!!って、何言わせるんですか~っ!」

 もう、信じられない!からかうにもほどがあるでしょ!

 私は真っ赤になった顔に両手で風を送りながら深呼吸をする。ああああ~・・・恥かしい。クールな顔してやり返してみたいものだわ、ほんと。どうせ出来ないけどさ。

 くくくく・・・ときゅうりは笑う。

 私は何とか卵焼きを口にいれ、それを噛むことに集中する努力をした。

 暫く無視していたら、だからな、ときゅうりの声が聞こえた。

「今日は青山につきっきりだろ?青山に何かアイデアでも湧いて、俺を探してんのかと思ったんだよ」

 きゅうりは私から視線を外し、壁に背中を預けてため息をついた。

 口をもぐもぐさせながらちらりときゅうりを盗み見る。

 ああそうか。今日中に契約貰ってくるって部長に言ってしまったけど、やっぱり手ごたえがある件があるわけではないんだ・・・。

 口元を結んで眉間にしわをよせ、パソコンと睨めっこしていた青山さんを思い出した。完全に追い詰められてるよなあ・・・。

 食欲がなくなって弁当箱の蓋を閉める。