トマトときゅうり



 長谷寺様のお嬢さんは、きゅうりを誘った。

 断ったっていってたけど、追いかけてきそうな雰囲気・・・。

「・・・凄いですね、断られたのに、どうやって一緒に過ごすつもりなんだろう・・・」

 返事を期待しない呟きだったけど、隣からは声が返ってきた。

「待ち合わせしましょうって電話がかかってきた。いかないつもりだけどな~・・・。なんせ、お客様だし、青山の為にもあまり無碍には出来ないところが辛い・・・」

 ・・・はあ、大変だなあ・・。前もしみじみ思ったけど、顔がいいってのも大変な苦労があるのね。よかった、私は特別美人でも可愛くもなくて。

「・・・・」

「ん、どうした?」

 黙ってしまった私をきゅうりが覗き込む。・・・近い近い近い!慌ててするっと距離を取った。

「コメントのしようがありません。仲間さんにでも彼女役頼むとかしてみるのはどうですか?」

 胸の奥がキリキリ痛んだけど、真っ直ぐ前を向いたまま言ってみる。

 あのゴージャス美人の仲間さんなら、連れて行ったら長谷寺様も諦めるんじゃ・・・。

 するときゅうりは即答した。

「え、俺がヤダ。あいつ怖いもん。後でどんな見返りがくるか・・・。それに、あいつはどうせデートだろうしな」

 あ、そうか。今日もデートで邪魔するなって電話切られたんだっけ。仲間さんの彼氏かあ・・・めちゃ見てみたい。