トマトときゅうり



「・・・・あー・・・クリスマスね。いっそのこと、大寒波がきて、大吹雪になってくんねーかな」

「は?」

 思わずきゅうりを見上げる。とーっても嫌そうな口調なのが、耳にひっかかった。

 エレベーターが来て、乗り込む。

 きゅうりはズボンのポケットに手を突っ込んで、目を閉じ、背中をエレベーターの壁に預けていた。

「・・・前の、長谷寺さんの娘さん。クリスマスには一緒にって、何度も誘ってくるんだ」

 思わず見上げる。

 長谷寺様のお嬢さんが、きゅうりをクリスマスに誘うって・・。

「・・・断れないんですか?そんな嫌そうにして」

「そのたびに、何度も断ってる。あんまりしつこいから、彼女と約束がありますのでって言ったんだが・・・」

 何だと!?

「彼女!?出来たんですか!?きゅ・・・でなく、楠本さん!」

 私の勢いに驚いたのか、きゅうりが閉じていた目を開いた。エレベーターが音をたてて1階につき、揃って出る。

 私の心臓はうるさいくらいで、聞こえるかと思った。

「いや、とりあえず、断る方便として」

 きゅうりの言葉に安堵のため息をつきそうになって、慌ててそれを飲み込んだ。