それに、近くにいれるのは嬉しいし、と心の中で付け足す。
事務所の鍵を開けて、電気をつける。机に回っていって引き出しの鍵をあけて、新契約のファイルを取り出した。
事務のカウンターにひじをついて、きゅうりは私のすることを見ていた。
「えーっと・・・。主力商品の・・・新井様の分ですか?」
「そう」
「じゃあ、今申請してるバーコードは破棄しときますね。それで、と」
新しいバーコードシールを貼って、きゅうりが前もって提出していた契約書から必要事項をうつす。
これで、ここに貼って・・・よし、これでいい。
手順を確認しながら進めていく。面接士が使う申告書類に予備のシールを貼って、カウンターで待つきゅうりに手渡した。
「はい、これで面接してもらって下さい」
「おおー、サンキュ。本当に助かった」
ニコニコして受け取ったきゅうりを見て、満足感が沸き起こる。私、たまたま近くにいてよかった。役に立てた!事務として。
暗い事務所に好きな人と二人っきり、その事実に、その時いきなり気付いた。
うわあ~・・・。突然照れが襲ってきて血が沸騰するのを感じる。ダメダメ、ちょっと落ち着いて私!ほら、深呼吸~深呼吸~・・・。
「片付けた?出れるか?」
きゅうりが声をかけるのに、私は必要もないのに屈みこんで一番下の引き出しを開け、大きな声で返した。
「あ、先に行っててくださーい!」



