好奇心で一杯の姪がきゅうりの仕事鞄を触っているのに気付いたのは義姉だったらしいが、その時には既におそく、明日被保険者との面談に使う面接士用の申告書類には、姪が黒いマジックでたくさん落書きをしていたらしい。
「あらら」
「ほんと、それ」
私の反応に、空中に指差しで同意する。
「驚いたけど、仕方ないし、悪気のない5歳を叱ってもしょうがない。それよりも困ったのは事務が全然捕まらなかったことかな」
「仲間さんはまだ連絡つかないんですか?」
そしたらきゅうりは、ムッとした顔をした。
「いや、トマトに連絡とれたあと、電話がかかってきた。説明したら何て言ったと思う?高らかに笑って、『あーら、楠本君が扱えない女もいるのね、自業自得よ!』だとよ。信じられるか?」
扱えない女・・・・5歳の姪。
「あはははは!」
きゅうりには悪いけど、私は思いっきり笑ってしまった。仲間さんの口真似、似すぎてるよきゅうり。
「笑うところじゃねーよ。しかも、『あたし今大事な男といるんだから、邪魔しないで』って電話切ったんだぞ!?あいつあれでも事務の責任者か!」
大爆笑だわ。さすが仲間さん!素敵過ぎる!きゅうりはむすっとしてたけど、私は構わず隣で笑いたいだけ笑ってやった。



