「コソコソだなんて。机に鍵忘れちゃって、取りに行くところなんです。忘年会はもう失礼してきたんですけど」
悪いことをしていたのを見つけたかのような言い方に、膨れて言い返す。青山さんは爽やかな笑顔で大きく笑った。
「あはは、ごめん。なら俺も一緒に上がるよ。個人情報、たくさん持ってるから、ロッカーにしまってから店に行かないと」
営業帰りだったら、当然個人情報の束を持っているはずだよね、と一人頷いて、守衛さんに入れてもらい、事務所までエレベーターで一緒に上がっていった。
「瀬川さん、顔ちょっと赤いよ。・・・お酒、飲んだ?」
静かなエレベーターで、青山さんが聞く。私はつい両手で顔を抑えて笑う。
「飲みました飲みました、たくさん。そんなに顔赤いですか?うう~・・やだなあ・・・」
「大丈夫、別におかしくないよ。お酒好きなの?」
「本格的に飲兵衛ってわけじゃないですけど。ビールやカクテルは好きです」
・・・もしかして、顔だけでなく、お酒臭いんじゃない?私・・。
「お酒臭いですか?」
うん?と青山さんが私を見る。そして首を振った。
「・・・いや、大丈夫だよ。お酒じゃなくて、何かいい匂いはするけど」
「あ、仲間さんの香水がうつってるかも」
ずっと隣に座っていたら香水がうつる事はよくある。袖を鼻に近づけてくんくんしてみたけど私には判らなかった。



